Georges Braque
ジョルジュ・ブラック

1882年、フランスのセーヌ川沿いの町アルジャントゥイユで生まれた画家。少年時代は家業のペンキ塗り・装飾画家の見習いをしながら、夜はフランス北西部の港湾都市であるル・アーヴルの高等美術学校『エコール・デ・ボザール』で絵画を学んだ。その後は兵役を経て、1902年から美術学校へ。当初はアンリ・マティスの影響を受けたが、1907年にパリで開催された展覧会『サロン・ドートンヌ』でのポール・セザンヌの記念回顧展や、同年に訪れたパブロ・ピカソのアトリエで見た作品『アビニヨンの娘たち』に衝撃を受けた。なぜならこの作品は、ヨーロッパでそれまで主流だった遠近法を使った作品とは真逆だったためである。
あらゆる角度から見た同一モチーフを極端にシンプルな図形として1つのキャンバスに描く、この「キュビズム」という芸術運動は、こうして20世紀初頭のパリで始まった。ブラックはセザンヌの要素を入れながらキュビズム的な絵画を手がけ、1909年にはピカソと初めて共同作業で描いた2つの作品を、同年にパリで出品。そのキュビズム的絵画は大きな話題を呼んだ。

その後も2人はパリで共同作業を続けたが、第一次世界大戦が勃発してブラックが出征したことで途絶えた。戦争から帰国後、1917年から制作を再開したが、戦争前のキュビズム的絵画ではなく、落ち着いた静物画を制作。以降も幾何学的なものから色彩豊かなものまで手がけた。ピカソより画家としての実績は劣るが、才能はピカソに勝るとも劣らない存在として高く評価されている。